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概要

ファーマコフォア解析

活性化合物から活性発現に関与すると予想される官能基特性(フィーチャー)を抽出し、その3次元的配置でモデル化したものをファーマコフォアモデルと呼びます。相互作用や活性に重要な特性を配置したファーマコフォアモデルを構築してデータベース検索を行うことで、立体配置の適合する化合物を検出できます。in silicoスクリーニングの手法の一つとして、Ligand-Based Drug Designにおいて利用されます。

ファーマコフォアモデルの構築と検索

ファーマコフォアの自動抽出機能による共通フィーチャーの抽出から、排除体積、SMARTSなどを組み合わせたフィーチャーの定義まで、柔軟なファーマコフォアモデルの構築が行えます。精度良く化合物を分類できるファーマコフォアモデルは、化合物構造のスクリーニングだけでなく、リガンド候補構造の設計指針としても有用な情報を提供します。

ファーマコフォアモデルの作成・編集

各官能基の位置に表示される水素結合供与体/受容体やその投影点、陽イオン、陰イオン、疎水性、芳香環中心などを表す球(フィーチャー)を選択して配置することでファーマコフォアモデルを作成します。受容体構造による立体障害領域やリガンドの外形を表す領域、リガンド原子が存在すべき領域を考慮した体積の拘束条件も追加できます。フィーチャーはSMARTSパターンを組み合わせて官能基や原子種を厳密に指定できます。
結合構造に基づくファーマコフォア構築例

ファーマコフォアスキーム

ファーマコフォアスキームは、使用するフィーチャーのセットを定義します。目的により、8種類のファーマコフォアスキームを使い分けることができます。

拡張ヒュッケル法を用いたファーマコフォアアノテーション(EHTスキーム)

EHTスキームは、拡張ヒュッケル法を用いて各原子における水素結合供与体性と水素結合受容体性の強さを見積もります。強さの計算には置換基や電子的な効果も考慮されます。ハロゲン結合やCH-O相互作用も取り扱えます。水素結合エネルギー値や仮想的な受容体の強さを指定して、期待した相互作用を満足する化合物を検索できます。

共通特性の自動抽出

複数の化合物に共通する特性の立体配置を自動的に検出してファーマコフォアモデルを構築できます。活性/不活性の情報を追加することで、分類能の高いフィーチャーやファーマコフォアを選抜できます。

Pharmacophore Consensus
化合物の重ね合わせから共通する特性を対話的に抽出してファーマコフォアモデルを構築します。Flexible Alignmentの重ね合わせ結果や、共通部分構造などでアラインメントされたデータベース中の分子から、重なり合いの良い特性を自動的に抽出します。

Pharmacophore Elucidation
複数の活性化合物について配座解析を行い、それぞれの配座から得られるフィーチャーを基準に分子を重ねあわせることで妥当なファーマコフォアモデルを構築します。

重ね合わせから抽出された共通特性に基づくファーマコフォア

ファーマコフォア検索

ファーマコフォアモデルを満足する化合物を配座解析データベースから高速に検索します。検索条件として、ファーマコフォアモデルの部分一致や必須フィーチャーなど条件指定が可能です。検索結果はファーマコフォアモデルに重なった座標配置で保存できます。

データベース検索に使うクエリには一致度の条件を設定するパラメータがあり、全ての官能基を一致させるだけでなく、部分的に重なる化合物を検出するオプションを選択することもできます。サイズの大きなデータベースを他のユーザーと共有するため、共有サーバーにデータベースを集約し、検索ジョブを共有サーバーで行い、検索結果の閲覧をローカルマシンのMOEで行うことができます。

拡張ヒュッケル法を用いて、水素結合ドナー性やアクセプター性の強度や、水素結合エネルギーの閾値を設けた検索も可能です。
ファーマコフォア検索結果

リードライク化合物データベース(低分子配座解析データベース)

35以上の試薬提供会社のカタログから収集したlead-like化合物の配座解析データベースが付属します。ファーマコフォア検索を用いたスクリーニングが可能です。データは約65万化合物で1分子当たり平均70配座、全体で4500万以上の配座が収録されています。

高速配座解析

ファーマコフォア検索では、フィーチャーの3次元配置が適合する化合物を検索するため、あらかじめ化合物の配座を計算しておく必要があります。Conformation Importは、化合物をフラグメントに分割し、各フラグメントについて配座解析を行い、それらのフラグメント配座を結合することで化合物の安定配座を高速に発生させます。さらに、塩・溶媒などの削除、Lipinski rule(分子量、logP、水素結合供与体・受容体数など)のような分子フィルターを適用することで、試薬カタログ等のデータをそのまま使用して、簡単に目的とするデータベースを作成することが可能です。
MOEに付属しているデータベースとして、化合物カタログなどから収集しConformation Importにより計算された約65万件のリードライク化合物(約4500万配座)の配座解析データベースを提供しています。

医薬品設計におけるファーマコフォアモデルの活用

ファーマコフォアモデルは、従来から行われている化合物ライブラリーの検索、ドッキングおよびフラグメントベースの薬物設計におけるフィルター、およびリガンド配置の拘束に使用することができます。ファーマコフォアモデルファイルは、QSARおよびフィンガープリントモデルと組み合わせてユーザー定義のコンセンサスモデルを作成できます。
医薬品設計におけるファーマコフォアモデルの活用

ファーマコフォアモデルを利用した拘束

ドッキングシミュレーションやフラグメントベースの分子設計において、重要な相互作用や官能基の位置を拘束するためにファーマコフォアモデルを利用できます。膨大な候補構造の中から、適切なリガンド候補構造の絞り込みに役立ちます。
ファーマコフォアモデルを利用した拘束
母核構造置換のためのファーマコフォアモデル。EGFRのヒンジ領域との水素結合を形成する母核構造を探索可能。

PLIFによるファーマコフォアの作成

複数の複合体構造からPLIF (Protein Ligand Interaction Fingerprint, PLIF)を作成し、各々のリガンド-受容体相互作用を満足させるファーマコフォアモデルの自動抽出ができます。
PLIFによるファーマコフォアの作成
CDK2の複数のリガンド-受容体相互作用パターンに基づくファーマコフォアモデルの作成。

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