アプリケーション
ドッキングスタディーツール FlexX
ターゲット受容体の立体構造が既知の場合、そのリガンド結合部位に適合するリガンド構造を探索し、さらに良く適合するように化学構造を最適化する”Structure-Based Drug Design(SBDD)”が適用できます。
FlexX1)は、タンパク質の立体構造を用いて化合物との結合構造を高速予測するドッキングシミュレーションソフトウェアです。
SBDDのために重要な解析手法である、リガンド−受容体間相互作用モデルの解析やバーチャルスクリーニングを可能にします。
1) Rarey, M. et al.
A Fast Flexible Docking Method using an Incremental Construction Algorithm.
J. Mol. Biol. 1996,261,470-489
結合モード予測
リガンド分子と既知のタンパク質の三次元構造があれば、FlexXを用いて高速にタンパク質‐リガンドのドッキング構造を予測します。
直感的に操作できるGUIは、短時間でドッキング計算のためのセットアップを可能にします。
そして、ドッキング計算結果は3D/2D表示や水素結合、疎水性相互作用、π-π相互作用といった各種相互作用表示など視覚的に分かりやすい形で表示されます。
ステロイド Dexamethasone は多環系で、 Glucocorticoid Receptor との複合体 (1M2Z) では水素結合は弱く、主に疎水相互作用で受容体と結合しています。この系に FlexX を適用した結果、 RMSD ≒ 0.66 Å (重原子)の構造を得ることができました。
テンプレートドッキング
テンプレートドッキングでは、テンプレートリガンドと入力リガンドの最大共通部分構造(MCS)を用いて、リガンド結合ポケットで両者を重ね合わせてリガンド構造を配置します。このように配置することで、ドッキング後のリガンド共通コアの結合モードが保持されやすくなると共に、高速にドッキングポーズを予測できます。
ファーマコフォア拘束
ポケットへのリガンドの配置に、ファーマコフォア拘束を適用できます。ファーマコフォアの定義はSeeSARを用いて簡単に行えます。用意されているファーマコフォア以外にも、SMARTS表現を用いてポーズの拘束を行えます。
バーチャルハイスループットスクリーニング( vHTS )
FlexXはvHTSを目的とした高速ドッキングが可能です。すべてのコアを用いて並列計算が実行され、16スレッドのノートPCを用いて1000化合物を1時間程度で処理が可能です。
FlexXのドッキングアルゴリズム
FlexX は、様々な論文で引用されている最も確立したタンパク質-リガンドのドッキングツールです。数百の論文で引用され、薬剤開発の分野において多数の成功事例があります。FlexXは、頑健なIncremental Constructionアルゴリズムを用いて化合物の結合構造を高速に求めます。
- 1.化合物を分子フラグメントに分割し、受容体からの相互作用点を満足する部位にベースとなるフラグメントを配置します。
- 2.置かれたフラグメントに残りのフラグメントを順次結合させながら同様に適切な配置を求め、結合部位内で化合物の全構造を再構築します。
- 3.得られた化合物の配置は、経験的なスコアリング関数1により評価され候補構造をランク付けします。
- 4.内蔵された経験的なスコアリング関数の他に、より精度の高いHydeスコアを用いて結合構造を評価できます。
ユーザーはドッキングポーズを用いたリガンド-受容体間の相互作用解析や複数の化合物候補からのバーチャルスクリーニングが可能です。