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ADF2014.01 リリースノート  2014年9月

ADF2014.01では、分子系・周期系ともにZlm fitがデフォルトの電子密度フィッティング法として採用されるようになりました。Beckeの数値積分法と併せて、力の計算の数値精度が改善されており、構造最適化計算がより安定して収束するようになっています。また、Zlm fitの採用により周期系の計算効率が大幅に改善されました。機能面では、分子系において、新しい汎関数であるMany-body dispersion (MBD)が追加されたことに加えて、GUIを使用することで配座異性体の発生、発生させた構造への一括計算、ボルツマン分布を考慮したスペクトルの計算に対応するようになりました。また、周期系では、スピン軌道相互作用を考慮した計算がnon-collinearで取り扱えます。さらに、ReaxFFでは、新しい力場ファイルが多く追加されたことに加え、粒子数を可変にするGrand-Canonical Monte Carlo法が実装されました。DFTBやCOSMO-RSなどその他のモジュール、および改良点・変更点の詳細につきましては以下をご参照ください。

ADF

DFT-MBD dispersion corrected XC functional

MBD@rsSCS法(下記論文参照)が導入されました。MBD@rsSCSは、有限のエネルギーギャップを持つ系の長距離の電子相関(従って分散力)を正確に記述するために考案されました。この方法では、短距離の相互作用についてはMBD法で使用されているDFT計算によって取り扱います。MBD@rsSCSは、遮蔽効果と無限次までの多体間VDWエネルギーの両方を考慮します。また、MDB計算では、距離で分割(range-separation, rs)した自己無撞着スクリーニング計算(SCS)で分極率を求め、その後、分極率から長距離相関エネルギーを計算しています。この計算のために、H-Ba, Hf-Rnの元素に対して、PBEとPBE0汎関数で用いるためのパラメータが用意されています。

A. Tkatchenko, R.A. DiStasio Jr., R. Car, M. Scheffler,
Accurate and Efficient Method for Many-Body van der Waals Interactions,
Physical Review Letters 108, 236402 (2012)

A. Ambrosetti, A.M. Reilly, Robert A. DiStasio Jr., A. Tkatchenko,
Long-range correlation energy calculated from coupled atomic response functions,
Journal of Chemical Physics 140, 18A508 (2014)

Intensity selected excitation energies

振動子強度を指定した励起状態計算ができるようになりました。”guess vector”として、一電子遷移の振動子強度がある閾値以上となる占有軌道と非占有軌道の組み合せを指定できます。

NMR spin-spin couplings with subsystem DFT

NMRスピンスピンカップリングの計算がFDE法と組み合わせて使用できるようになりました。

Distance difference restraints in optimizations

4原子から定義される2原子間の距離の差に拘束を課した構造最適化計算ができるようになりました。

Charge model 5

charge model 5 (CM5)はHirshfeld 解析を使用します。実測の双極子モーメントを正確に再現するように決められたパラメータを用いて原子電荷を計算します。

Improved density fitting with radial spline functions and Zlm’s

デフォルトの電子密度フィッテング法がSTO fitからZlmFit(下記論文参照)に変わりました。ZlmFitは前回のバージョンから改良が加えられており、ほとんど全ての種類の計算に使用できるようになっています。また、ZlmFit(と積分グリッド)は指定した領域ごとに異なるqualityを設定でき、例えば、ある分子の活性部位にだけ精度の高いものを使用することができます。なお、frozen density embedding (FDE)法に関してはZlmFitの使用に対応していないオプションがあります。この場合は、STO fitを使用してください。

M. Franchini, P.H.T. Philipsen, E. van Lenthe, L. Visscher,
Accurate Coulomb Potentials for Periodic and Molecular Systems through Density Fitting,
Journal of Chemical Theory and Computation 10, 1994 (2014)

NMR chemical shifts: spin-orbit gauge correction term, unscaled ZORA

ADF2008.01より、NMRの化学遮蔽のスピン軌道相互作用計算部分にバグあり、ゲージ依存の問題が生じていることが分かりました。このバグはスピン軌道相互作用部分にゲージ依存する項を含めることにより解決されました。

NMRの化学遮蔽の計算においてscaled ZORA法を使用するとゲージ依存の問題が生じます。このため、NMRの化学遮蔽を計算する際のデフォルトがunscaled ZORA法を使用するように変更されました。

Hybrid汎関数の場合、NMRの化学遮蔽を計算する際は全電子基底を使用してください。フローズンコア基底でHybrid汎関数を使用するとNMRの化学遮蔽の計算結果がゲージ依存してしまうため、この場合はNMRプログラムは停止するようになっています。

Much smaller TAPE21 (.t21) result files

ADFの解析振動計算の結果(TAPE21または.t21)のファイルサイズが大幅に小さくなりました。大規模系において特に顕著です。

GPGPU (CUDA) implementation for selected bottlenecks

グリッド上での数値積分による行列要素の計算など、多くのアルゴリズムがCUDAに移植されました。CUDAを使用することで、LDAまたはGGA汎関数のFock行列の計算が大幅に高速化されます。また、エネルギー勾配(力)や解析二次微分(振動数)の計算速度も改善されます。GPUコードを含む実行ファイル(現在は64ビッドLinuxのみ対応)をご希望の方はお問い合わせください。

なお、今回のGPU版の実装といくつかのベンチマーク結果について、Hans van SchootとLuuk Visscherによる論文が2015年初旬に出版される予定です。

Local quality

指定した原子の領域ごとに電子密度フィッティングと積分グリッドのqualityを設定できるようになりました。ADFinput経由で領域の設定が簡単に行えます。

Distance cut-offs for Hartree-Fock exchange integrals changed

Hatree-Fockの交換積分の計算に使用する距離カットオフについて、より厳しい判定条件が実装されました。

Scalable SCF: better parallelization and less memory

新しいSCFのアルゴリズムであるScalable SCFが実装されました。今回の実装で並列化効率が改善されており、また必要なメモリ容量も少なくなったため、より大きな分子の計算が可能になっています。デフォルトのSCFは現在Scalable SCFになっていますが、対応していない機能が使用された場合にはScalable SCFは使用されません。

COSMO runs in parallel

連続溶媒和モデルのCOSMO法が並列計算に対応しました。COSMO法で使用する表面のグリッド点が多くなる大規模系で高速化が期待できます。

RamanRange: include A1 representation to the list of Raman-active ones

ラマン活性な状態のリストにA1対称性のものが含まれるようになりました。

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BAND

Changed defaults

BANDのデフォルト設定が変更されました。

〇NUMERICALQUALITY concept:
新しいキーワードNUMERICALQUALITYが追加されました。新バージョンより、全ての主要なアルゴリズムはQualityサブキーワードによってその数値精度を制御します。NUMERICALQUALITYキーワードは、これまでのAccuracyキーワードと同じように、主要アルゴリズムの数値精度を一括して設定するのに使用されます。ただし、基底関数とモデルハミルトニアンは別に設定する必要があります。

〇Fit method:
デフォルトの電子密度フィッテング法がSTO fitからZlmFitに変わりました。ZlmFitには、系のサイズに対する計算速度の大幅な改善と系統的な数値精度の制御という2つの特長があります。STO fitはかなり高精度でしたが(特にQZ4Pのサイズを使用したとき)、ランタノイドやアクチノイドを含む系に対しては、部分占有されたf殻を記述するための高次の軌道角運動量量子数lを持つ関数がなかったために精度があまり高くありませんでした。ZlmFitの採用により、クーロンポテンシャルを計算する際に用いていた遮蔽関数を使用する必要がなくなりました。現在の実装では適切な多極子展開によりクーロンポテンシャルを計算しています。遮蔽効果は延伸した単位セルを持つ系には不十分でした。また、遮蔽関数の使用は、スラブ表面や直鎖の計算でz軸方向に極性があるような場合には精度があまり高くありませんでした。

〇Grid:
デフォルトの数値積分法がVoronoiグリッドからBeckeグリッドに変わりました。Beckeグリッドでは構造変位に対しての数値ノイズが低減されており、構造最適化計算が安定するという利点があります。

〇KSpace:
K空間の積分に等間隔メッシュ(方向ごとに異なるメッシュ数を指定可能)が使用されるようになりました。基本的なアルゴリズムは変わらず、これまでと同じように2次の解析テトラへドロン法を使用します。新バージョンでは、デフォルトで使用されるK空間のサンプリング数は格子ベクトルの大きさに依存します。実空間で大きい格子を持つ系ほど、K空間で使用するメッシュ数が少なくなります。

〇Confinement:
NUMERICALQUALITYキーワードでqualityの低いものを使用したときほど、閉じ込め(confinement)用のある滑らかな関数を使って基底関数をより局在化させます。原理上、この局在化により基底関数(の動径部分)の形が変わります。

〇Direct:
Directオプションでディスクへの基底関数データの読み書きが削減されました。計算結果には影響しません。

〇NMRと光学応答:
NMRと光学応答の計算では、古いデフォルト設定が使用されます。また、円筒対称性を持つ系についても古いデフォルト設定が使用されます。

Non-collinear spin

スピン軌道相互作用を考慮した相対論計算において、磁化密度の非共線性 (non-collinear) が取り扱えるようになりました。non-collinearモデルでは磁化密度の大きさをXC汎関数のスピン分極として使用します。

LISTi and LISTb SCF convergence accelerators

SCFの収束が難しい系のために、LISTi法を使う新しいSCFのオプションが追加されました。LISTi法により収束に要するサイクル数が削減できますが、この方法では追加の電子密度フィッティングが必要になるため、SCFの1サイクルに要する計算コストが増大します。

Significantly smaller RUNKF files

計算結果のファイルに保存される行列要素の数が、リスタート計算に最低限必要なものに削減されました。各k点について行列の実部だけが保存されます。

Local quality

以前より原子ごとに基底関数のサイズを指定することはできていましたが、今回より数値積分と電子密度のグリッドのqualityについても部分ごとに指定できるようになりました。興味のある領域については、サイズの大きな基底関数と精度の高い数値積分および電子密度フィッティングを使用し、それ以外の領域については基底関数のサイズを小さく、かつグリッドについては精度を落とすことができます。

DZP basis set

ADFと同様、BANDにもDZPサイズの基底関数が使用できるようになりました。DZP基底は全ての元素について用意されているわけではなく、対応していない元素についてはDZPの指定でTZPが代わりに使用されます。DZP基底はDZ基底よりも構造についてずっと良い精度を与えますが、遷移金属表面上の有機分子の吸着計算についてはDZP基底の使用は推奨されません。これは、DZP基底を指定すると、遷移金属についてはTZP基底で、有機分子についてはDZP基底で記述されるため、アンバランスな設定により表面の構造が崩れてしまう可能性があるためです。

DFTB

TDDFTB excitation energies

DFTBで分子系の励起状態計算ができるようになりました(TD-DFTB、下記論文参照)。一電子遷移による一重項一重項、一重項三重項の励起状態が計算できます。この実装では、計算コストを削減するために、ある閾値以上の振動子強度を持つ一電子遷移だけを計算することが可能です。Davidson法で行列の最低固有値を見つけるのにPRIMMEライブラリが使用されています。

R. Ruger, E. van Lenthe, Y. Lu, J. Frenzel, T. Heine, and L. Visscher,
Efficient Calculation of Electronic Absorption Spectra by Means of Intensity-Selected TD-DFTB,
J. Chem. Theory Comp., submitted. Manuscript available on arXiv
(http://arxiv.org/abs/1409.4521).

Constrained optimizations

拘束を課した構造最適化計算に対応しました。2原子間の距離、3原子間の角度、4つの原子によって定義される二面角に拘束を課せます。

QUASINANO2013.1 parameters

Mohammad Wahiduzzamanらによって開発された力場パラメータQUASINANO2013.1(下記論文参照)が利用できるようになりました。QUASINANO2013.1ではf元素を除く周期表のほとんどの元素がサポートされています。現在、このパラメータセットでは電子部分の相互作用だけを考慮しています。従って、与えられた分子構造のスペクトル計算にだけ用いることができ、原子核間の相互作用を含む全エネルギーの計算や力の計算には現在対応していません。例えば、パラメータはTDDFTB計算に用いることができます。

M. Wahiduzzaman, A.F. Oliveira, P.H.T. Philipsen, L. Zhechkov, E. van Lenthe, H.A. Witek, T. Heine,
DFTB Parameters for the Periodic Table: Part 1, Electronic Structure,
Journal of Chemical Theory and Computation 9, 4006 (2013)

Density matrix purification and sparse matrix algebra

ハミルトニアンに対する密度行列を計算するための密度行列purification法が実装されました。この方法では、ハミルトニアンが疎行列で、かつ系のHOMO-LUMOギャップが十分に大きいときに、計算量が系のサイズに対してリニアに増大するようになっています。サイズの大きな絶縁体や半導体の計算に非常に有効な方法です。

Conductance

conductanceプログラムが追加されました。二つの半無限電極に挟まれた分子のコヒーレント輸送を非平衡グリーン関数法(NEGF)に基づいてDFTB計算するプログラムです。

Faster MOPAC

mklライブラリの使用と並列化(下記論文参照)の採用により、大きい分子については以前のバージョンのMOPACよりも2桁までの高速化が達成されています。

J.D.C. Maia, G.A.U. Carvalho, C.P. Mangueira, S.R. Santana, L.A.F. Cabral, and G.B. Rocha,
GPU Linear Algebra Libraries and GPGPU Programming for Accelerating MOPAC Semiempirical Quantum Chemistry Calculations,
J. Chem. Theory Comp. 8, 3072-3081 (2012)

ReaxFF

Changes in the dihedral angle and conjugation terms

二面角項と共役項について結合次数が小さいときに現れる不連続性の問題を解決するよう、f(BO)の表式を変更しました。これは、下記のオリジナル論文のf_10 (式10b)とf_12 (式11b)の表式を変更したことに対応します。各項の新しい表式は、f_10 = [1 – exp(-2 * lambda_23 * BO**2)], f_12 = sin(BO*pi/3)**4となります。新しい表式ではBO -> 0のときのdE/dBOの漸近挙動が正しく再現されます。

“ReaxFF: A Reactive Force Field for Hydrocarbons”, J. Phys. Chem. A 2001, 105, 9396-9409

Grand cononical Monte-Carlo (GCMC)

下記のSenftleらの2つの論文に記述されているGCMC法がReaxFFに実装されました。

Thomas P. Senftle, Randall J. Meyer, Michael J. Janik and Adri C.T. van Duin,
Development of a ReaxFF potential for Pd/O and application to palladium oxide formation,
J. Chem. Phys. 139, 044109 (2013)

Thomas P. Senftle, Adri C.T. van Duin, Michael J. Janik,
Determining in situ phases of a nanoparticle catalyst via grand canonical Monte Carlo simulations with the ReaxFF potential,
Catalysis Communications volume 52, 5 July 2014, Pages 72-77

Monte-Carlo force-field parameter optimization

力場パラメータをフィッティングするための使いやすいモンテカルロベースの最適化法 (並列処理に対応) が実装されました。この方法は、下記のEldhose Iypeらの論文に基づいています。

E. Iype, M. Huetter, A.P.J. Jansen, S.V. Nedea, C.C.M. Rindt,
Parameterization of a Reactive Force Field Using a Monte Carlo Algorithm,
J. Comp. Chem. 34, 1143-1154 (2013)

GUI

Conformers

ADF-GUI上で配座異性体が取り扱えるようになりました。配座異性体の発生、発生させた構造の最適化計算、各種スペクトル(UV/Vis, IR, NMRなど)の計算に対応しています。計算したスペクトルは、ボルツマン分布など、個々の配座異性体に重み付けをして表示できます。

配座異性体の構造は.sdfファイルに保存して取り扱います。この.sdfファイルは、各構造のタイトル行に計算したエネルギー値を記載した標準的なSDF形式のファイルです。また、各構造の計算結果の保存先情報も記載されます。ADF-GUIでは、配座異性体の発生と識別にRDKitを使用しています。

配座異性体に対してスペクトルを計算する際の大まかな手順は以下のとおりです。
〇ADFinput上のEdit->Conformersより配座異性体を発生させます(このとき各構造は.sdfファイルに保存されます)
〇ADFなどの構造最適化計算により、各異性体の構造を最適化します(このとき新しい.sdfファイルが作成されます)
〇ADFinput上のModel->Conformersより選択した構造に対してスペクトルの計算を行います
〇SCM -> Spectraよりボルツマン分布で重み付けしたスペクトルを表示します

手順の詳細については下記のチュートリアル資料をご参考ください。

http://www.scm.com/Doc/Doc2014/GUI/GUI_tutorial/page94.html

ADFinput support of new features, local quality, smaller files

ADF, BAND, DFTB, MOPACなど各計算モジュールの新機能に対応するよう、多くの小さな変更がADFinputに加えられています。変更点の一つには、KFファイル、特にt21ファイルのgzipによる自動圧縮と自動解凍機能が含まれます。これにより、t21ファイルのサイズが大幅に削減できるようになりました。

複数分子からなる大きな系の編集が少しだけ簡単に行えるようになりました。複数の分子をregionとして定義することで、スライダーを使った複数分子の移動が一括して行えます。例えば、表面上の溶媒分子を一括して移動させるのが簡単に行えます。

その他の重要な変更点は、ADFとBANDについて数値精度の新しい設定(NUMERICALQUALITY)に対応したことです。指定した領域ごとに数値精度を設定することもできます。

ADFjobs ssh multiplexing

ADFjobsでsshの多重接続(コネクションの共有)に対応するようになりました。多重接続により、リモートマシンへの接続がかなり高速化され、1台あたりに必要なssh接続について数回のコネクションで済むようになります。本機能の使用は環境変数のSCM_SSH_MULTIPLEXINGで設定できます。なお、OpenSSHのみの対応(Windowsは不可)となりますのでご注意ください。

ADFspectra: Conformers handling, improved units handling

ADFspectra上で、配座異性体に対して重み付けしたスペクトルが計算できるようになりました。また、前回変更したウィンドウの位置とサイズを記憶するようになりました。スペクトルの種類ごとに使用した単位も記憶されます。

ADFmovie: improved ReaxFF and SDF support

ADFmovieでsdfファイルの読み込みに対応しました(現在は配座異性体を取り扱うのに主に使用されます)。また、ReaxFFの計算結果について、選択した分子の表示・非表示が設定できるようになりました。さらに、ReaxFFで発生した化学種を確認するためのMoleculesダイアログが大幅に改善されました。

ADFview new tools: MultiIso, Clipping plane, diverging colormap, Dipole vector, Tensors

ADFviewが複数の等値表面表示(MultiIso)に対応しました。MultiIsoを使用すると、同じフィールドデータの等値面が複数表示され、等値面値に応じて色付けされます。MultiIsoを透過度(transparency)とトリミング面(clipping plane)の設定と一緒に用いることで、等値面値に応じたスカラーフィールドの変化がとても見やすくなります。設定の詳細については下記のチュートリアル資料をご参考ください。

http://www.scm.com/Doc/Doc2014/GUI/GUI_tutorial/page101.html

次に、ADFviewでの表示にDivergingカラーマップが導入されました。ほとんどの表示に対して以前の虹色のカラーマップよりも見やすくなっています。

最後に、ADFview上で双極子モーメントといくつかのテンソル量の可視化に対応しました。

ADFoutput search and speed

ADFoutputのウィンドウの下部に検索フィールドが追加されました。また、サイズの大きいファイルの表示がずっと速くなりました。

UFF: new UFF4MOF

UFFプログラムでM.A. Addicoatらによって開発された金属有機構造体(MOF)用のパラメータUFF4MOF(下記論文参照)が利用できるようになりました。

Matthew A. Addicoat , Nina Vankova , Ismot Farjana Akter , and Thomas Heine,
An extension of the Universal Force Field to Metal-Organic Frameworks,
J. Chem. Theory Comput. 10 (2), 880-891 (2013)

Scripting

adfreportとadfprepの両方についてADF以外のジョブ(BAND、MOPAC、DFTB)の取り扱いが大幅に改善されました。実行例については$ADFHOME/examples/adf/Scriptingにあるexampleをご覧ください。

また、adfreportとadfprepについて、.sdfファイルと.cryファイルの他、.t21ファイルに保存されたLTまたはIRC計算の構造が取り扱えるようになりました。例えば、LTまたはIRC計算で得られた複数の構造について一点計算を実行し、構造変位に応じた分子軌道の変化を確認するのに使用できます。

ADFjobs上でTools -> Prepareからこの機能を使用できますが、より簡便にADFinput上で設定することもできます。

これらのスクリプトツールは配座異性体の計算を実行するのにも使用します。全ての異性体の計算を設定するのに数行程度のスクリプトの作成で済みます。ADFinput上では自動的にこの機能を使用していますが、保存されている.runファイルからadfprepとadfreportをどのように使用しているかを確認することができます。

COSMO-RS: COSMO-SAC 2013-ADF

COSMO-SAC用の新しいパラメータが導入されました(下記論文参照)。新バージョンのCOSMO-RSモジュールでは、この新しい方法COSMO-SAC 2013-ADFを用いて活量係数を計算することができます。この方法は混合物の相互作用において分散力の寄与を考慮しています。COSMO-SAC 2013-ADF法は、純物質のプロパティ計算にはまだ対応していません。

R. Xiong, S. I. Sandler, and R. I. Burnett,
An Improvement to COSMO-SAC for Predicting Thermodynamic Properties,
Ind. Eng. Chem. Res., 53, 8265-8278 (2014).

Source code and compiling

ソースコードのコンパイルについて次の変更点があります。
〇configureスクリプトの内容が変更されました。詳細は”Install/configure -h”コマンドでご確認ください。
〇コンパイルの際、これまでのyamではなくpythonベースの並列ビルドシステムforayを使うようになりました。
〇前処理が必要であった.d90ファイルの代わりに.f90ファイルでFortranのソースコードが構成されるようになりました。
〇WindowsとLinuxに対して、デフォルトのMPIがIntelMPIになりました。

License file request and installation

GUIあるいはその他の計算モジュール(ADFやBANDなど)を起動するとき、ライセンスファイルの存在を確認するためのスクリプトが実行されます。ライセンスファイルがない場合には、ライセンスファイル取得のための”Get License”ウィンドウが立ち上がります。

“Get License”ウィンドウ上でライセンスファイルを請求すると、SCMのライセンスサーバーにマシン情報が転送され、ご登録内容に応じてライセンスファイルが発行・送付されます。この際、ライセンスファイルは自動的に登録マシン上にインストールされます。

この自動ライセンス発行システムですが、現在、トライアル使用時にのみライセンスファイルが自動的に発行されるようになっています。ユーザ様は、これまで通りマシン情報についてはメールでお送りください。”Get License”ウィンドウ上でCancelボタンを押すとマシン情報の記載されたscm-info.txtファイルが作成されます。

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