機能詳細
物性推算ツール群
MedeAは、物性値を導くツールを利用することで、第一原理計算や分子動力学計算の結果を基に、各種物性を自動的に評価することができます。
第一原理計算に基づく物性推算ツール
- 格子振動特性・熱力学物性評価ツール MedeA-Phonon
- 弾性特性・熱力学物性評価ツール MedeA-MT
- 電子状態解析ツール MedeA-Electronics
- クラスタ展開法ツール MedeA-UNCLE
分子動力学計算に基づく物性推算ツール
格子振動特性・熱力学物性評価ツール MedeA-Phonon
Phonon は、格子振動特性を計算するためのツールです。振動エントロピーを取り入れた自由エネルギー等、熱力学物性を評価することができます。MT ツールと組み合わせて相安定性の検討、圧力下での計算、表面への適用など、様々な使い方が可能です。
手法
Phonon では、ダイレクトアプローチ (*1)と呼ばれる方法で計算を行います。この方法では、十分な大きさのスーパーセルを構築し、そのスーパーセル内の各原子を動かし、その力の変化を第一原理計算で算出し、2 次微分行列を構築、フォノン特性の計算を行います。
力の計算を行うための第一原理計算プログラムとして、VASP を使用します。
1. K. Parlinski, Z. Q. Li, Y. Kawazoe, Phys. Rev. Lett., 78, 4063(1997).
物性
- フォノン分散曲線
- フォノン状態密度
- 振動モードのアニメーション表示
- Γ点におけるフォノン振動の振動数と対称性の解析
- 零点振動エネルギー
- 定積熱容量、内部エネルギー、エントロピー、自由エネルギー
- IR/Raman スペクトル
Phononインターフェース
以下の処理を自動的に行い、Phonon 計算を実行します。
- 計算の詳細パラメータ入力(VASP 計算の設定を含む)
- 対称性の決定
- スーパーセルと原子を変位させた構造の自動作成
- 2 次微分行列の構築、プロパティの計算
Phonon は、Job Server / Task Serverと連携し、各構造におけるVASP の計算を分散処理する機能を装備しています。
適用例
MgH2の生成熱を温度の関数として計算できます。
弾性特性・熱力学物性評価ツール MedeA-MT
MT ツールは物質の弾性・熱力学物性を計算するためのツールです。デバイ近似のもと、弾性定数ほか、自由エネルギーや熱容量といった熱力学物性を評価することができます。
手法
固体の格子振動を連続弾性体の弾性波動として近似(デバイ近似)し、固体の弾性を計算します。対象となる結晶構造に対して歪みを与え、その応力変化から弾性定数を計算、続いて諸物性の計算を行います。
応力を計算するための第一原理計算プログラムとしてVASP あるいは、分子動力学計算プログラムLAMMPSを使用します。
物性
- 結晶物質の弾性定数
- 弾性コンプライアンス行列と弾性定数行列
- 多結晶の弾性率(Voigt, Reuβ, Hill の方法 (*3))
- 多結晶の音速
- デバイ温度
- 定積熱容量、エンタルピー、自由エネルギー
- Debye-Grüneisen 近似下での熱膨張係数
MTインターフェース
-
以下の処理を自動的に行い、MT 計算を実行します。
- 対称性の決定
- 対称性を考慮した独立な弾性定数の決定
- 指定した値で歪みを与えた構造の自動作成
- 全ての構造に対する応力の計算
- 剛性行列計算ならびに各プロパティの計算
MTは、Job Server / Task Server と連携し、各構造における計算を分散処理する機能を装備しています。
適用例
クォーツは代表的な鉱物で、応用分野は圧電材料や半導体デバイス等広い範囲に及びます。
MTを用いた計算では、SiO2の弾性定数について実験との良い一致を示しています。
1. Landolt-Bornstein, Vol. 29, Eds. A. G. Every and A. K. McCurdy, Springer-Verlag, Berlin/ Heidelberg/New York 1992.
2. Y. Le Page and P. Saxe, Phys. Rev. B 65, 104104(2992),
Y. Le Page, P. Saxe and J. R. Rodgers, phys. stat. sol. (b) 229, 1155 (2002).
3. O. L. Anderson, J. Phys. Chem. Solids, 24, 909 (1963).
電子状態解析ツール MedeA-Electronics
第一原理電子状態計算の結果を詳細に解析するためのツールです。バンド構造を解析することで各種電子物性を計算します。また、フェルミ面のグラフィカルな表示も可能です。
第一原理電子状態計算プログラムとして、VASP を使用します。
物性
- バンド構造図の3次元表示(フェルミ面の表示)
- 逆格子空間上での任意の点における各バンドの
有効質量の計算 - 電気伝導率、Seebeck係数、熱伝導率、ホール係数、電子比熱、Pauli常磁性磁化率
クラスタ展開法ツール MedeA-UNCLE
UNCLE(UNiversal CLuster Expansion, *1)は、クラスター展開法に基づいた物性推算ツールです。合金や固溶体等といった不規則に構成原子が配列した物質の特性を第一原理計算法の精度を保ちながら、効率よく計算することができます。第一原理計算プログラムとして、VASP を使用します。
物性
- 安定相の構造と基底状態ダイアグラム
- 空孔密度
- 溶解度
- 混合エネルギー
- 相安定性の温度・濃度依存性
- 秩序・無秩序転移温度
1. D. Lerch, O. Wieckhorst, G. L. W. Hart, R. W. Forcade, and S. Muller, Modelling and Simulation in Materials Science and Engineering 17, 055003 (2009).
熱伝導性・粘性評価ツール Thermal Conductivity & Viscosity
Thermal Conductivity・Viscosityは、古典的な分子動力学計算を基に、純物質・混合物の流体の熱伝導性・粘性を計算するツールです。
計算には分子動力学計算プログラムとして、MedeA-LAMMPSを利用します。
物性
- 熱伝導性/粘性の評価
-
- 平衡系の分子動力学に基づくGreen-Kuboの方法
- 非平衡系の分子動力学に基づくMuller-Paltheの方法
適用例
CO2流体の計算例
【計算条件】
P=494bar, V=2.89×2.89×8.68nm3,
T=298.2K, ρ=1.0341g/cm3
【粘度】
計算値η=1.360×10-4Pas,
実験値η=1.3466×10-4Pas
拡散係数評価ツール LAMMPS-Diffusion
分子動力学計算を基に、純物質・混合物の流体の自己拡散係数を計算するツールです。選択した原子の平均二乗変位を計算し、Einsteinの拡散方程式より自己拡散係数を評価します。
計算には分子動力学計算プログラムとして、MedeA-LAMMPSを利用します。
物性
- 選択した原子の平均二乗変位
- Einstein拡散方程式に基づく自己拡散係数
凝集エネルギー密度評価ツール LAMMPS-CED
LAMMPS-CED(Cohesive Energy Density)は、分子動力学計算を基に凝集エネルギー密度を計算するツールです。SP(溶解度パラメータ)値の評価などに用いられます。
計算には分子動力学計算プログラムとして、MedeA-LAMMPSを利用します。
定量的構造物性相関ツール P3C
P3C(Polymer Property Prediction using Correlations)は、Biceranoの方法論2に基づいた定量的構造物性相関(QSPR)ツールです。MedeAがもつ単量体のライブラリから、高分子の各種物性(ガラス転移点、凝集エネルギー、表面張力、誘電率、ヤング率等)を推算します。
- SciMAPS
- 材料設計支援プラットフォーム